医長 福田 崇宏
1.ビジョン
高齢化社会、高度ストレス社会の進展によって、近年精神障害の有病率が増加している。基幹型総合病院である当院に於いて地域住民皆さんの身体疾患治療が十分に行われるために、合併する精神疾患(認知症、せん妄、睡眠障害、うつ等)に対して、主診療科と連携し積極的で質の高い精神科医療を実践する。具体的には1.精神神経科リエゾン診療体制の強化発展、2.総合入院診療体制の構築への貢献、3.円滑な病-病連携、病-診連携により患者利益の追求をはかる。
さらに伝統的な精神科治療から最新の治療までを踏まえて、医療スタッフの精神疾患・精神科医療に関する教育を行い知識・対応力を高めるとともに、精神障がい者への偏見を持たない専門医療人材を育成する。
2.サービス・業務内容
精神神経科部門
- リエゾン精神神経科診療
身体疾患入院治療中の患者に合併する精神疾患やメンタルヘルス上の問題に対して、各科の依頼に迅速に対応。情報収集、診察の上で必要に応じて向精神薬の処方や精神科専門治療を実施することで、医療の質を高めスムーズな退院に結びつける
- 24時間365日のオンコール体制
常勤医2名でシフトを組みいずれかが待機する。時間外に緊急を要する精神状態を生じた患者(自殺企図など)が発生した場合は電話や応召にて対応する
- 地域精神科専門病院や精神科クリニックとの連携
精神病院入院中あるいは通院中の患者の手術が安全に行われるようサポートを行うとともに、入退院時には緊密な情報交換を行う
- 多職種による精神科リエゾンチームの運営
- 緩和ケアチームへの協力 週1回のカンファレンスへの参加
- 臨床倫理チームへの専門的意見の提供と対応の提案
- 出前講座などにて市民への精神科領域の健康情報の発信普及を図る
臨床心理部門
- 精神科リエゾンチーム活動などを通じて、外来・入院患者への予診及び精神的サポート、医療スタッフへのコンサルテーション・リエゾンを実施
- 精神神経科の診察補助業務
- 緩和ケア支援チームに参加し、チーム医療にて心理及び精神看護の提供
- 臨床倫理チームへの専門的意見の提供と対応の提案
- メンタルヘルス不調がある職員への心理面接や心理検査の実施及び、管理者への管理コンサルテーションの実施
- 出前講座にて講師の実施
- 精神神経科にて、心理検査、心理療法の実施
- 物忘れ外来にて、神経心理検査の実施及び、認知機能の重症度評価の実施
- 公安委員会診断書作成のための、認知機能重症度評価、神経心理検査の実施
3.体制
常勤精神科医:2名、非常勤精神科医:2名
臨床心理士3名
<資格>
精神科専門医:常勤2名 非常勤2名
精神保健指定医:常勤1名 非常勤2名
長野県発達障がい専門医:非常勤1名
精神神経学会認知症診療医:常勤1名
リハビリテーション科臨床認定医:常勤1名
臨床心理士(公認心理師):3名
(内CLIMBプログラムファシリテーター1名)
4.実績・年度報告
本年度は新型コロナウイルス感染症の拡大により、地域住民の社会生活や経済活動が停滞した。その影響で、元々精神科的な問題を抱えた患者さんの病状が悪化するケースが増える傾向が顕著であった。また、家族の面会禁止、日中のデイサービス中止等の感染対策の結果、不穏となる認知症患者やせん妄患者が増え対応に苦慮した。近隣精神科病院も空床が減り、受け入れのタイミングが先延ばされる傾向が見られ、転院まで薬物調整などを行って、病棟を支える必要があった。
<精神神経科新患依頼件数>
2021年度 351件
2020年度 404件
2019年度 453件
※主な疾患は、せん妄、認知症、統合失調症、抑うつ状態、向精神薬過量内服など
<総合入院体制加算2に係わる用件1>
108件(2021年1月~12月累計)
116件(2020年1月~12月累計)
78件(2019年1月~12月累計)
※精神疾患診療体制加算2+救急患者の入院3日目以内における入院精神療法+精神疾患診断治療初回加算の合計件数
<精神科リエゾンチーム加算>
49件(2021年1月~12月累計)
60件(2020年1月~12月累計)
5.学術等業績
<出前講座>
※新型コロナ感染症対策のため開催自粛
<研修>
2021年6月 精神科専門医指定研修(Web) 福田