理事長 相澤孝夫

2021年度は2020年度に引き続いて、新型コロナウイルス感染症への対応に振り回された1年であった。2020年度末の第3波を引き継ぐ形の小流行がみられた2021年4月~6月の従来株による第4波(4波として記載されることはほとんどないが)、7月~9月のデルタ株による第5波、2022年1月~3月のオミクロン株(BA1/BA2)による第6波が我が国を席巻した。第3波、第5波、第6波と感染者数の増加は著明であり、感染力の増強が示唆されたが、死亡率は第3波が1.535%であったものが、第5波は0.414%、第6波は0.143%と低下し、病毒性が減じたことから医療対応も重症患者対応から感染者数増加への対応と変遷を遂げることとなった。

このような状況の中、医療は感染症医療と通常医療双方の医療需要に的確に対応することが問われることとなった。松本医療圏の新型コロナウイルス感染症入院病床調整計画いわゆる「松本モデル」は医療圏内の9病院が役割分担と連携により感染症医療に対応することを定めたものであり、2021年の感染症拡大時においてもこの仕組みを基盤として松本保健所が調整役を果たすことで、その機能は十分に発揮された。しかし、何よりも大切で重要なことは、医療現場における状況に応じた柔軟な対応であり、柔軟に対応できるかどうかにより医療機関の力量が問われていたと思っている。

感染症患者の入院や感染症外来において、多数の感染症患者に対応いただいた職員の労苦に敬意を表したい。また、院内での感染症の発生に際しても職員の一致協力による適切な対応により、感染症の院内拡大を最小限にとどめることが出来たことにもお礼を申し上げたい。

慈泉会の提供する通常医療においては、年間を通してみると2020年度の落ち込みから回復し、2019年度の状況にほぼ復帰しているばかりか、在宅医療などの分野においては2019年度をも凌ぐ成果を挙げており、慈泉会においてはまさに感染症治療と通常医療の見事な両立を図ることができたといって差し支えないだろう。職員の皆さんの奮闘に対し心から感謝を申し上げたい。

国難とも言える新型コロナウイルス感染症の拡大蔓延は慈泉会にも大きな試煉となったが、職員が一丸となって真剣に対峙し、乗り越えることができたという経験は慈泉会にとって貴重なものとなった。この経験を慈泉会の更なる発展、進化に活かして頂きたい。