統括医長 山本 智清
ビジョン
ER受診者のうち、内科疾患の診療を広く深く、可能な限り迅速に行う。また、初期研修および後期研修医への教育も担う。
総合内科はERでの内科系疾患の診療および、その後の入院診療をシームレスにおこなうための部門として2017年に設けられた。 総合内科スタッフは消化器、外科 等各自のサブスペシャリティを有しサブスペシャリティ領域の診療も行いつつ、ERで内科系疾患の診療と、その後の入院診療を行っている。ERでの診療は開業医からの内科系疾患の紹介および、夜間祝日にERを受診した内科系疾患のフォローが中心であるが、入院での精査治療が必要となった場合も、特殊な治療手技が必要なケース以外は当科で引き続き担当する。診断に難渋する症例も多く、これまでにTAFRO症候群、ブルセラ症、CVID、多中心性キャッスルマン病、EGPA、8trisomyによる腸管ベーチェット様症状、サルコイドーシス、ANCA関連中耳炎、irAEとしての多関節炎、などの稀少疾患の診療を経験している。
当科のもうひとつの役割として研修医教育がある。当院の初期研修では2ヶ月の総合内科ローテーションを必須としているが、ローテートしてくる初期研修医に対しては、週3-4回ERで指導医とともに診療を行い、入院を要する場合はそのまま継続して担当してもらっている。研修医がローテートしてくる時期にもよるが常時5~10名程度の患者を入院で受け持ち、稀少症例や教育的な症例に関しては学会発表を行うようにしている(2020年度は、内科学会等で2件の症例報告を行い、1件で表彰をうけている)。ローテート中の研修医だけでなく初期研修医全体への教育として、毎昼30分を使って総合内科カンファレンスを行い、臨床医としての思考方法がより早く確立できるよう指導している。
また内科専攻医の教育もその一部を担当している。当院の内科研修プログラムに参加する専攻医は最初の半年間は総合内科に所属して内科全般の研修を行うが、その中でGeneral Internal Medicineの指導教育を行っている。
さらに、科全体の診療技術向上のため、外部への情報発信(MedPeer)、外部との交流(信州GIM)を行っている。
サービス内容
2020年度は、4名の専属スタッフ医師で運営した。平日日中の内科系ER受診患者の診療および、そこから入院となった症例の病棟診療を主たる業務としたが、週3単位の健診での上部消化管内視鏡、病院での精密検査としての上部消化管内視鏡1単位、および下部消化管内視鏡検査2単位を担当した。
初期研修医に対する教育指導として、毎日12時30分~13時00分までカンファレンスを行っている。参加者は初期研修医をはじめ、各科後期研修医、各科指導医、実習医学生など多彩であり、また、提示される症例も内科一般だけでなく、外傷から小児科と幅広く、研修医のみでなく、我々指導医層も多くのことを学べる場であると自負している。2020年度もほぼ毎日開催した。
総合内科 昼カンファレンス症例一覧(2020年度・記録分のみ)
日付 | 年 | 性 | 診断 |
4月2日 | 25 | M | IM(EBV) |
4月3日 | 95 | F | 急性脊髄症(疑い) |
4月7日 | 68 | M | 感染性心内膜炎 |
5月18日 | 18 | M | PID or 卵巣膿瘍 |
5月19日 | 80 | M | 肝門部胆管癌による胆管炎 |
5月20日 | 89 | F | 骨盤部悪性腫瘍による静脈閉塞(肺癌骨盤転移の疑い) |
5月21日 | 33 | F | PB19 感染症 |
5月25日 | 89 | M | NOMIによる敗血症 |
5月26日 | 89 | F | ACS |
5月27日 | 51 | M | 尿管結石による尿管破裂 |
5月28日 | 54 | M | 慢性心不全の急性増悪 |
5月29日 | 65 | M | 急性呼吸不全(Ⅱ型) |
6月1日 | 62 | F | 気管支喘息の発作 |
6月2日 | 50 | F | 腫瘍(乳癌)によるSIADH |
6月4日 | 62 | F | 甲状腺中毒症(Basedaw) |
6月8日 | S状結腸癌 | ||
6月11日 | 78 | F | 腰椎硬膜外膿瘍 |
6月12日 | 89 | F | 肺癌・癌性胸膜炎 |
6月16日 | 28 | M | 虫垂炎 |
6月17日 | 78 | M | 大動脈-十二指腸瘻 |
6月18日 | 39 | F | 胸膜炎 |
6月22日 | 16 | F | DKA (T1DM) |
6月23日 | 88 | M | スキルス胃癌 |
6月24日 | 29 | F | K.oxytoca腸炎 |
6月25日 | 49 | F | 卵管瘤嚢腫 |
6月29日 | 35 | F | 左胸膜炎(ウイルス性疑い) |
6月30日 | 12 | F | 卵巣出血 |
7月1日 | 30 | M | 亜急性甲状腺炎 |
7月2日 | 88 | F | 粟粒結核疑い |
7月3日 | 77 | M | 治療失敗時に考えるべきこと |
7月6日 | 86 | M | 慢性腎不全+左尿管結石+複雑性UTI |
7月7日 | 87 | M | 直腸潰瘍疑い |
7月8日 | 65 | F | 子宮頸癌の膀胱浸潤による両側水腎症→腎後性腎不全 |
7月9日 | 57 | F | セロトニン症候群 |
7月10日 | 62 | F | 化膿性脊椎炎/椎間板炎 |
7月13日 | 帯状疱疹 | ||
7月14日 | 50 | F | 肝硬変+アルコール多飲をベースにしたAKA疑い |
7月15日 | 58 | M | 胸壁由来の胸痛 |
7月16日 | 63 | M | SMV血栓症 |
7月17日 | 82 | F | パーキンソン症候群の寡動による食事摂取不良、脱水 |
7月20日 | 16 | F | 耳下腺膿瘍 |
7月22日 | 93 | F | 慢性腎不全の自然経過(疑) |
7月28日 | 57 | M | 右鼡径ヘルニア嵌頓 |
7月29日 | 35 | F | 十二指腸穿孔+続発性腹腔内膿瘍 |
7月30日 | 79 | M | 前立腺炎、Ralstonia mannitolytica血症 |
8月3日 | 72 | F | 帯状疱疹 |
8月5日 | 40 | M | TGA疑い |
8月6日 | 78 | M | 大動脈ステント(+血栓)による腎動脈閉塞→急性腎不全 |
8月7日 | 26 | M | EBV 伝染性単核球症 |
8月11日 | 32 | F | AFBN(疑)+euglycemic DKA |
8月12日 | 77 | F | NOMI |
8月13日 | 80 | M | 前立腺癌の骨転移 |
8月17日 | 69 | M | レジオネラ肺炎 |
8月19日 | 52 | F | glioma |
8月20日 | 17 | F | 副甲状腺機能低下症 |
8月21日 | 33 | M | 虫垂炎 |
8月24日 | 85 | F | 帯状疱疹 |
8月26日 | 肺塞栓 | ||
8月27日 | 大腸癌 多発肝転移・脾転移・腹膜播種 | ||
8月28日 | 63 | M | 上部消化管出血 |
8月31日 | 44 | M | 縦隔リンパ節腫大(診断未確定) |
9月1日 | 82 | M | 悪性リンパ腫 |
9月2日 | 71 | F | 血管浮腫 |
9月3日 | 71 | M | 肺塞栓 |
9月4日 | 69 | F | 大動脈解離 |
9月7日 | 37 | F | K.oxytoca腸炎 |
9月10日 | 68 | F | Guillan-Barre 症候群疑い |
9月17日 | 78 | M | Gitelman症候群 疑い |
9月23日 | 58 | M | 急性虫垂炎 |
9月25日 | 58 | M | 視床出血 |
9月28日 | 大腸憩室炎 | ||
9月29日 | 19 | F | 無石性胆嚢炎 |
9月30日 | 49 | 気管内腫瘍、NET | |
10月1日 | 63 | F | 下行結腸癌腸閉塞 |
10月5日 | 52 | M | 結核性胸膜炎/肺結核 |
10月6日 | VitD製剤による高Ca血症 | ||
10月7日 | 膵炎疑い | ||
10月8日 | 微小変化型ネフローゼ | ||
10月9日 | 93 | M | 肺炎 |
10月12日 | 44 | M | 原発性アルドステロン症 |
10月14日 | 51 | 胆嚢炎 | |
10月15日 | 45 | F | 左卵巣の成熟奇形腫の茎捻転 |
10月19日 | 卵巣出血 | ||
10月20日 | 外耳道の帯状疱疹の水疱で伝音性難聴 | ||
10月21日 | 50 | M | 前庭神経炎 |
10月22日 | アルコール離脱による振戦 | ||
10月23日 | 肝細胞癌 | ||
10月26日 | 74 | M | 膀胱癌の両側尿管浸潤 |
10月28日 | 78 | F | 心房細動になり代償不全となったCHF |
10月29日 | 20 | M | 穿孔性虫垂炎 |
10月30日 | アシクロビル脳症 | ||
11月2日 | 88 | F | 低ナトリウム血症による意識障害疑い |
11月5日 | 80 | M | 伝導障害(精査中) |
11月9日 | 93 | F | CHF急性増悪 |
11月10日 | 40 | M | 亜急性連合性脊髄炎疑い |
11月11日 | 80 | F | 右新規脳梗塞 |
11月12日 | 90 | F | 肺炎 or 尿路感染 |
11月13日 | 72 | M | FNと薬剤熱疑い |
11月16日 | 88 | M | 膀胱癌からの出血 |
11月17日 | 90 | F | 貧血(原因診断は未)による心不全増悪 |
11月19日 | 85 | M | 急性胆管炎 |
11月24日 | 48 | M | 胆管炎疑い |
11月25日 | 17 | F | 右卵巣成熟奇形腫の捻転 |
12月8日 | 85 | M | 慢性腎不全の体液貯留 |
12月9日 | 90 | M | 前立腺肥大±ワーファリン過剰 |
12月10日 | 80 | F | 左内頸動脈閉塞 |
12月11日 | 87 | F | 総胆管結石 |
12月16日 | 85 | F | IgA血管炎(HSP) |
12月22日 | 54 | F | Epithroid angiosarcoma |
12月23日 | 93 | F | NOMI→来院後数時間で死亡 |
12月24日 | 33 | M | もやもや病からの梗塞 |
12月25日 | 68 | M | GIST腫瘍内出血 |
12月28日 | 81 | M | 慢性心不全急性増悪(ピルジカイニド中毒) |
12月29日 | 68 | M | 胸部大動脈解離(ST-A) |
1月4日 | 64 | M | 孤発性SMA解離 |
1月5日 | 42 | M | SGLT-2による 正常血糖DKA |
1月6日 | 84 | F | MTX関連リンパ増殖性疾患 |
1月7日 | 81 | M | 肝原発Peripheral Tcell Lymphoma |
1月8日 | 65 | M | 孤発性SMA解離 |
1月12日 | 83 | M | IPF急性増悪 |
1月13日 | 85 | F | 下壁のACS |
1月14日 | 32 | M | 甲状腺機能亢進症(Basedaw) |
1月18日 | 帯状疱疹 | ||
1月20日 | 閉鎖孔ヘルニア | ||
1月21日 | 80 | F | 左胸鎖乳突筋膿瘍 |
1月22日 | 80 | M | 膀胱破裂 |
1月25日 | 90 | M | 灯油による化学熱傷 |
1月26日 | 70 | F | 薬剤性肝障害疑い |
1月28日 | 頚椎症性頚髄症 | ||
1月29日 | 40 | F | ブドウ球菌性TSS |
2月2日 | 32 | F | 原発性アルドステロン症 |
2月4日 | 80 | 輸入脚症候群による膵炎 | |
2月5日 | 72 | M | 手口感覚症候群(cheiro-oral syndrome) |
2月8日 | 70 | M | ITP疑い |
2月9日 | 64 | F | 子宮頚癌、子宮留膿腫、尿管破裂 |
2月11日 | 80 | F | 右CSDH |
2月12日 | 70 | M | NSTE-ACS |
2月16日 | 偽性高カリウム血症、寒冷凝集素症 | ||
2月17日 | 絞扼性腸閉塞 | ||
2月18日 | 51 | F | 虫垂炎 |
2月19日 | 94 | F | BPPV |
2月22日 | 69 | M | ACNES |
2月25日 | 86 | M | #2のSTEMI |
3月3日 | 94 | M | 膿胸(結核性胸膜炎疑い) |
3月4日 | 21 | M | IM vs GAS扁桃炎 |
3月10日 | 93 | M | 壊死性筋膜炎疑い |
3月11日 | 67 | F | 心嚢水貯留の鑑別 |
3月12日 | 77 | M | 腰椎椎体炎 |
3月16日 | 80 | M | 感染性心内膜炎 |
3月17日 | 84 | F | 心不全急性増悪 |
3月18日 | 48 | M | 虫垂炎 |
3月22日 | 60 | M | 橋出血(Raymond症候群) |
3月25日 | 91 | M | 器質化肺炎(疑い) |
3月31日 | 17 | F | なんらかのウイルス感染に伴う脳症 |
構成・提供体制
(2020年3月時点)
専属スタッフ3名
外来体制:月曜日~金曜日のER診療
入院体制 : 主病棟は4S
新規入院カンファレンスと回診・・・平日朝8:30 ~10:00 毎日
内科合同カンファレンス ・・・毎月曜日
総合内科カンファレンス・・・平日毎日昼 12:30~13:00
救急科・総合内科合同カンファレンス・・・毎木曜日8:15~
資格
院外資格保有者数 : (重複あり)
総合内科専門医2名
消化器病学会専門医:1名
消化器内視鏡学会専門医2名
外科専門医1名
設備・機器
総合内科として所有するものはなし
実績
(2020年度)
ER診療 初診平均 5~10人前後/日
入院診療 500人/年
学術・研修
- 谷村 純 Trousseau症候群の予後不良因子の検討
医学生・研修医の日本内科学会ことはじめ2020東京 ※優秀演題賞受賞
- 尾崎 太一 開口障害、眼球突出を呈した海綿静脈洞血栓症の2例
医学生・研修医の日本内科学会ことはじめ2020東京